テニスの原点-8
フットワークを鍛えるための方法として、練習に取り入れたものに三つあります。
その一つは、ボールの空気を抜く方法です。これはバウンドを低くします。
当然ながら緩慢な動きではこのボールを捉えるのは不可能です。
これは脚力の強化に役立ちました。
二つ目は、フォアハンドと決めたら徹底してフォアハンドで打ちました。
勿論相手がバックサイドに打つ時はハーフロブにするとか。細かい打ち合わせはしました。
スーパーマンでも追いつけない練習をしても意味がありません。
狙いは互いに決めてそれを納得の上でやっていたのです。
これは苦手の克服に役立ちました。
これをフォアとバックと交互にしていましたから、練習量はさほどでもなかったのですが、
数回やるとコート上で引っくり返ってしまいました。
最後は、先輩がコートで相手になってくれるのは良いのですが、
決して強いボールではなく左右前後に振られ、しかもセンターにいる
先輩の場所へ確実に返球しなければなりません。
これらの練習は、今のサーフェイス(ハードコート)では困難ではないでしょうか?
当時は殆どがクレーコートでしたから、スライドすることでフットワークの
調整をしていました。それが可能であっただけに左程苦痛とは思わなかったのです。
いまのようなサーフェイスでは恐らく足を痛めていただろうと思われます。
これらの練習は確かに苦しいものでしたが、
反面フットワークの強化にはよかったと思っています。しかも、これにより、
練習中に漫然と返球するのではなく、
どのように返球するのが良いか等対処方法を考えさせられたのも事実です。
最近盛んに行われている長距離走は、全く実行した記憶はありません。
持久力はコート上での練習で充分補えると判断したからです。
それより瞬発力の強化に重きを置いてきました。これはどれが正解とは云えません。
その時のプレーヤーの状況を観察した結果で練習の内容をチェックするべきと思われます。
テニスの原点-7
腹筋運動と平行して行ったトレーニングは、握力の強化でした。
いまのような軽いラケットではなく、木製の重たいラケットを使用していましたから、
インパクトでの爆発力を高めるには握力が大切なものと理解していました。
最初は握力を高める道具を利用していましたが、
嵩張るためいつでも持っているわけにはいかない。そこで思い出したのが、
ソフトテニスのボールでした。これをコートや学生服に忍ばせて盛んに握っていました。
軟らかいボールですが、始めた頃はすぐ指が疲れて
教室でペンが上手く握れませんでしたが、そのうち慣れてくるとポケットの中で、
プシュという異様な音を出してパンクするようになりました。
握力は定期的に測ったことはありませんが、
その音を聞いて強くなっていると満足していました。
それから、当時野球では巨人ファンだった私は、川上選手の打撃エピソードの中で、
車に乗ると電柱を的にして近付くとバットを握り締める動作を繰り返していたのを知り、
バスの中で同じような方法でボールを握り締めていました。
ボールをパンクさせるのが目的ではないわけですから、これは良い練習になりました。
その意味合いは、インパクトにおける瞬発的な動作を身につけるものではないかと、
自分なりに理解していました。
それとスポーツには絶対必要である動体視力の強化にも繋がると考えたわけです。
このような繰り返しで単調なバス通学も苦にならないもので、
やがて身について来たと思っています。
このように当時は、先輩から練習のたびにボールを4個貰い、
それを一日の練習の中で後生大事に扱う時代でしたから、
テニスに必要なフィジカル・トレーニングは自分が考えないと
どうにもならなかったものです。足腰を鍛えようと片道10キロの通学路を歩いたことも
ありましたが、これは疲れて授業どころでなくやめました。
効果の程は不明ですが、女子アスリートの人見絹江さんの自叙伝から、
入浴の際に胸の辺りでとどめ、湯の中へ肩は絶対入れなかったとありました。
説明では心肺機能訓練のためとあり早速実行しました。
このように情報は極めて少なかったので、
先輩たちの話等からヒントを得て自分で考えていました。
テニスの原点-6
私がテニスを始めた頃、見よう見まねでやっていたフィジカル・トレーニングを
振り返って見たいと思います。
特に力を入れたのは腹筋運動でした。
頭の後ろで両手を組む方法の腹筋運動では全く身体が起きなかったものです。
両足が上がってしまい身体が起こせないのです。これは悔しかった思い出があります。
無理に挑戦しても結果が出ないので、まずは両足を机の下へ潜らせて行いました。
これがエスカレートして、押入れから布団を引っ張り出して、
真ん中の仕切りまで積み重ね足を突っ込んで仰向けになり起き上がると言う
270度に挑戦したことがあります。
回数は出来ませんがこれは充実感がありました。
腹筋運動は、しばらくすると筋肉を確認できるので面白くなります。
四つの塊が左右に出来るのは、成し遂げたと言う気持ちになります。
このためでしょうか、身体を回転させる運動が主体のテニスでは、
腹筋運動自体が非常に強い味方になったように思います。
学生時代はバスで通学していました。このとき座ることは先ずありませんでした。
空席が多いときは恥ずかしかったですが、それでも座りませんでした。
立ったままでも吊革を持たないで、いよいよまで我慢して鍛錬しました。
これで更に腹筋が強くなったと思います。
バスではベタ足に慣れると爪先で立つようにしたのですが、
これは難しかったことを覚えています。
ベタ足なら爪先と踵にバランスよく体重を移動すれば、
極端な振動(急停車等)でもなければ結構我慢できるものです。
しかし、爪先立ちはすぐよろけます。このとき併せて行ったのが膝の使い方でした。
ここに柔軟性を与えると、僅かですが我慢できるようになったのです。
いずれにしても、トレーニングセンターのようなものもなく、
ごく手近かなところを利用しながら鍛錬するしかなかったのです。
通学時の時間を何とか利用したいとの思いもありました。
この訓練で副次的なプラスですが、足の故障は全く経験がありません。
テニスの原点-5
テニスは周囲の状況が絶えず変化をするため、
オープンスキルのスポーツとして考えるべきだと言われています。
オープンスキルとは、相手やボールの位置・スピードなどが絶えず変化する外的な状況に
対応して、発揮される運動技能を言います。
それだけにオープンスキル的な指導の必要性があるのです。
したがって、プレーヤー自身がその都度状況を判断しながら、
行動に移しフィードバックして次のショットに対応してゆく、と言う繰り返しで
ゲームが進行して行きます。しかもそれらのことを限られた範囲の中(コート)で行い、
素早い動きとボールのコントロールを重視するスポーツなのです。
大学生の頃に、体育関係の教授から依頼されて「庭球試合における
エネルギー代謝に関する研究」に参加したことがあります。
軟式庭球での結果を踏まえて相対的な見地から行われたようです。
結論的には軟式庭球よりエネルギー需要量は多く、
他のスポーツに比較すると高校男子のサッカー試合と同等のものがあると言われました。
しかし、これは個別の技術に対してのエネルギー需要量をベースにして、
試合で発揮される個別の技術の内容を換算したものであり、
実際の試合結果の数値ではありません。この結果から分かるのは、
実際の試合では思ったほどのエネルギー消耗はなく、あくまでも瞬発的なものであり、
持久力を左程必要とするものではないと言うことでした。
ということは、テニス運動中のエネルギーが比較的短い時間で行われ、
回復を必要とされる繰り返しの運動といえます。
一球、一球に集中し効果的なショットを打つ必要があります。
それだけに日頃の練習や特に試合前の練習でのドリル選択では、
長時間の振り回しや長距離のランニング等は効果的ではないと判断されるのです。
それよりは、試合においてポイントとポイント間(20秒ルール)や、
チェンジコートの時間(90秒ルール)を有効に使うことにより
自分の打ったショットのフィードバックや、次に為すべきことを冷静に考える方が
試合の勝敗には大きな影響を与えるものだと思われます。
テニスは他のスポーツに見られるように、試合中は監督やコーチからいかなる指示や
助言も受けることは出来ないのです。
随ってプレヤーは日頃の練習の時から、自分で考え判断して打ったり走ったりして、
次に備える習慣を身に付けられるように訓練しなければいけません。
テニスの原点-4
昭和三十年ごろ、プロテニス・チームが来日した。
クレーマー・セッジマン・セグラ・ゴンザレスの四選手だった。
大会の間に関西の学生をコーチしたのですが、その時のアドバイスが記事になったのです。
「ストロークのときに強く打つ必要はない。またネットに出る機会を作るように、
1stサービスと2ndサービスの間を空けて打つようにすること。
レシーブの時にはライジングを打って相手のコートへ早く返すことが必要である」
「身体の小さい者は、トスを高く上げることによって上背を補わなければならない。
バックスイングを厚く身体を被せるように打球しないと強打は出来ない」
「全プレーヤーともフォアハンドのバックスイングが大きい。
またレシーブのスイングも大きすぎる。
モーションを小さくすることこそ近代テニスに迫る一番大事なことだ」
「セカンドサーブは、これで試合が決する大切なものであるから確実にチャンスを
掴めむボールが送れるように練習すべきである。
とにかく、試合に勝つためにはフォームも大事だが、
何といっても練習量の多いことが一番である」
「ストロークの強さばかり気にしている。強いボールより正確によい位置に
ボールを送ってチャンスを作るようにすることが先ずは大事なのである」
テニスの原点-3
元デ杯選手の熊谷一弥さんの「天才は努力がつくるもの」という対談集から
ピップアップしました。1916年から活躍された方です。
「身体の大きいやつには、一度身体のど真ん中に早い球を打ち込んで
受け返したやつで処理するということでないと、逃げてしまってはいけません。
ともかく逃げる所がないのですから、
ネットすれすれの球を身体の真ん中めがけて行ったのです」
「ゲームの進め方に非常な違いがあるんじゃないかと思うのです。
軟球で、ワンポイント、ワンポイント鍛えられてきた経験が、
やはり硬球の場合にもものを云っているのですね。技量は実に立派なもので、
向こう(アメリカ)の一流と違わぬような技量を持っているけれども
勝負をやってみると割合に弱い」
「日本人同士の時はいいが、向こうのプレヤーとぶっつけてみると成績が上がらぬ。
どのポイントも同じようなやり方ですね。一つも工夫が見られないですな。
本人はやっているのかもしれないけれども、
ポイントは石にかじりついてもという工夫がない。
3−3の次のポイントも、3−4の次のポイントも同じようにやっている」
「ゲームは何と言っても勝たなければいかぬのですから、
技量がうまくなることも非常に大事だけれども、
そういう点にやはりもう少し今のプレーヤーが頭を使って、
ただポンポン打つというばかりではなしにやってもらいたいものですね」
「勝っても負けてもいいという勝負なら、初めからやらなければいい。
勝つということを主要な目的としないテニスなんかは問題じゃないですよ。
試合そのものが、勝負と言う重要な要素を持っている以上は、
やはり勝たなければならぬと言うのが持論です」
「やはり精神力と言うものは、自信を持つと強くなる。
自信力が薄ければどんなに頑張っても駄目なんです。
ですから技量を練磨すれば、元来あまり精神力の強くない人でも、
ある程度強くすることは出来るのです。
また、卓越したものを一つ持つと言うことは、自信力に大いにプラスしますね」
私のテニスの原点-2
コーチの際に役立つのではと、学生時代から新聞の切抜きをしていました。
今日はその中からご紹介します。
これは急逝したテニス仲間を偲んでの一文です。以下は原文どおりに掲載します。
何かのヒントになれば幸いです。
「一言にしていい尽くせば彼のテニスは理詰めテニスであり、
力の不足を補うために駿足と技の冴えをを持ってした。
これは彼の稀有の勘のよさが、軽快と敏捷さを描き出すためで
手品師のような技を見せることすらあった。
彼は理詰めのテニスを生むためには、人知れず苦労していた。
朝、暗いころに私が住んでいた近くのテニスコートに来てただ一人板打ち練習をしたり、
コートを駆け回ったりして「技と身と心」の鍛錬にこれ努めていた。
また、腕頸を強くしたい念願から、ラケットの柄を七寸許りに切断したものに鉛を詰込み、
それを握って常に振り回していた。
彼はまたコーチの名人であると謳われ少年達をよく指導していた。
いろいろとテニスの言葉を考えたり、理論の創作にも工夫していた。
彼が残した言葉の中に次のものがあり、私の日記に書いてある。
「ネットが土お山で作られたり、トタン張りであったなら、プレーヤーは殆どボールを
ネットに当てることをしないであろう」全くうまい表現である。
ネットするミスの数はアウトの数よりも余程多いので、ボールがネットするたびごとに、
トタン張りに打ち当りガンガン鳴り音を立てるのでは、
大いに恥じて誰もネットしないことになるのかも知れない。
ここにも彼の「不敗の道」が説かれている。
私のテニスの原点-1
昭和28年6月24日 福田先生から頂いたご返事の日付です。
私のテニスの原点となった手紙の内容をご紹介します。
以下は原文のままです。何度読み返したか分かりません。
”今日旺文社から回送された御手紙拝見いたしました。
テニスに御精進の由結構に存じます。
益々研鑽御努力他の人よりも余計に球を打つことを御薦めします。
しかも「この一球」の精神を決して御忘れないように。左に御回答いたします。
一、ストロークのドライブに就いて。貴君は軟球から入られたらしいですが
軟球から入られた人の大欠点が二つあります。
それは? リストをかぶせること? 球を下げて打つことです。
貴君はイングリッシュ・グリップだと云われますが、
このグリップは大体論から云ってドライブのグリップでなくスライスのものです。
しかし、ラケットを立てて大V字を描くグリップでなければドライブを
打てぬことはありません。
貴君はきっとリストをかぶせているからドライブの良いのが打てないのでしょう。
リストは後ろに引いたのを前に出すだけで決してかぶせてはいけません。
かぶせないでフラット気味に打ってフォロースルーを長くすればドライブは打てます。
ウエスタンがドライブにいいのは御存知でしょう。
その反対のイングリッシュはスライスに向いているのです。
只今の所貴君の必要なことは (ドライブを打つに)
軟球のように引掛けぬことではないでしょうか
二、スライスが疲れてくると駄目だとはおかしですね。
大体ドライブは力がいりスライスは相手の球勢を利用するので疲れなく楽なはずです。
これはスライスのせいでなくフォームが悪いのではありませんか
スライスは一番力が要らずスピードが出る打ち方であります。
三、イングリッシュで球が体に近くてはいけません。
最も体から球を離して打つグリップであります。
打球点を前にするより体から離してもっと楽にラケットを振って打つように
したら良いのではないでしょうか
四、ヴォレーは曲げた肘を伸ばすことと肩を使うことです。
一に これはラケット面の角度です。これさえ出来れば楽にヴォレー出来ます。
ローヴォレーはラケット面を上に向けることです。
ヴォレーがカットのようになるのはバックスイングが短いからでしょう。
特にローヴォレーなど上から短くてはカットになってしまいます。
後ろへ長く引いて面を作り曲げた肘を伸ばしながら肩を使えば良いヴォレーが出来ます。
五、壁打ちは腕が非常に疲れ球が早く返ってくるのでフォームがよく出来た上に
練習した方がいいと思います。いいフォームが出来るまで
一番いいのは打ち易い球を打って貰うことが最上の練習です。
六、水泳したとて一向差し支えありませんでしょう。
七、サーヴの時点真直ぐに球が飛ばないのは球の横側を打つからです。
球の上部から右側にかけて打つようにして下さい。
一見すれば直ぐ直してあげられますが紙上では難しいことです。
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