NO-3
いまの時代、精神面の指導には難しさを感じさせます。
だからと言ってこれを考えないではあり得ません。スポーツの主な価値は、
スポーツの精神すなわちスポーツマンシップにある。・・・のは誰も否定出来ない事実です。
特に学校スポーツの中に、この精神が存在しないならば、そこには何らの価値も意義も
認められない。・・・・と考えられています。
いまの場合、スポーツマン・シップとは、どのように解釈すれば良いのでしょうか?
ある本を読んでいましたら、スポーツマン・シップとは、基本的に「尊重する」事である。
と書かれていました。すなわち、試合の相手を尊重し、審判を尊重し、試合のルールを
尊重することであり、これは自分の行うゲームそのものを尊重する事にもなる。
という説明でした。この尊重する態度を実現できる要素は、フェアプレーの精神では
ないでしょうか。プレーをする選手は、あらゆる場面で修練しながら
スポーツマン・シップを身につけるのです。
それだけに、真にスポーツマンであるかどうかは、勝負に負けた時の態度でわかる
と言われています。負けたときに素直に負けを認め、それでいて頭を垂れず、
相手を称え次に備えることの出来る人が真のスポーツマンと言えるのです。
先般の福田先生の文章の中にあったGood Loserがそれなのだと思います。
コーチの精神面の指導における使命は、プレーヤーたちに「その競技に勝とうと思う
強い気持ちを持たせる」のと同時に、それらが「スポーツマン・シップに基づかないかぎり
意味がない」ことを知らしめる必要があると思います。
競技をする目的は勝利を収める事です。
そしてその勝利とは、ルールによって規定されます。スポーツをするのは、
本質的にルールによって管理された身体活動であり、参加者全員がルールに従って
活動しなければならないのです。相手がいるから勝ちを収めるように、
ルールがあって初めてプレーが可能になり勝敗が決まります。したがってルールを
破っても勝ちたいと思うのは、その勝利に本来の意味がなくなることを示しています。
ゲームを尊重するというのは、参加者が事前に合意している約束ごとであるルールを
尊重することであり、それはフェアプレーであることが絶対必要です。
したがって、自分が参加しているスポーツを尊重するならば、勝つためには何でもする
というのではなく、そのスポーツを成立させているルールの範囲で全力を尽くすべきだと
教えることが、コーチにとって大変重要な役割になってくるのです。
NO-2
コーチを受けたいと思う人の理由は様々だと思われます。しかし、根底の部分で共通
しているのは、変化を求めているのではないでしょうか?
低迷している現状から脱却したい、いま以上にレベルアップしたい。しかし、
自分だけでは限界がある。このようなときに選手はコーチを求めると思われます。
すなわち、いままでのような状況を続けるのではなく、コーチを受けることで何かを
変えられるのではないかと期待するのです。
このため、コーチと選手の関係は、本来的には選手が主でありコーチは従でなければ
ならないのです。選手の勝利を喜び、敗戦にチャレンジへの意欲を持たせることが基本と
ならなければなりません。選手の年齢いかんを問わず一人の人間として認めることが
必要なのです。
日本と外国のコーチングについて、明確に異なるのは報酬の問題ではないかと
思われます。
日本の場合は、コーチの基盤は弱くボランティアが当然とされていました。
それだけに内容には限界があり、遂には精神論を迎合することになります。
しかし、外国では選手強化のためと、労働力に対する見返りを考え、
自分の職業としているだけに自分自身をレベルアルプさせることに懸命となります。
これは必然的にコーチの資質を高めることになります。
このような考え方による彼我の差は益々大きくなると思われます。
前にも、人間は自分を客観視することは非常に困難であると言いました。
それだけに、自分がどのような特徴を持ち、どのような欠点で悩んでいるのか率直に
話してくれる人がいれば、回り道をすることなく目標への到達が出来るはずです。
私自身は、全員を集めて「さあ、このようにスイングしよう」というコーチングは
苦手です。形にはめることに抵抗感があるからです。一人一人の特徴を大切にしたい。
これが基本にありますから、すべて個人が対象となります。そのため、
定型的な練習メニューではなく、「球出し」「ショートテニス」「ゲーム」が
主体となります。この中で選手の特徴を掴み、弱点を把握します。
それが一番顕著に現れるのがゲームだと思っています。
NO-1
コーチの語源は先日も記述しましたように、選手達を無事に目標まで運ぶことに
あるようです。私がいままでコーチした選手数は、延べ700人を超えますが、
果たして何人運ぶことが出来たのか?その問いには、皆無ではないと思っていますが
胸を張る実績はありません。絶えず試行錯誤を重ねてい るのが現状です。
基本的な理念として、選手本人の「やる気」がベースにあります。
学生が最優先するのは学業です。その中でレベルを上げるには「やる気」しかない
と思っています。ですから練習を強要したことは一度もありません。無理やりに
引っ張っても、それが選手のためになるとは考えられないし、自己満足で指導するのは
選手との乖離を生じるだけと思うからです。周りから見れば反面頼りなさを感じる
かも知れませんが、コート上で実際に相手と闘うのは選手自身であり、
コーチではないのです。これだけは徹底して話をします。
次に伝えるのは、スタイルに共通性はないということです。
あなたはあなたでしかない。目標とする選手を模倣するのは大事ですが、
心技体を考えるときどのように似通っていても、あなたがヒンギスにはなれないのです。
その意味合いは、それ以下かもしれないが、それ以上になる可能性を誰も否定
できないのです。
目標を大きく持つ大切さはここにあると思います。
私の言うことを理解してくれる選手は、試合終了後のアドバイスだけではなく、
夜になって電話をしてきます。30分近く話をすることもあります。
選手が熱心であればあるほど嬉しい気持ちになるものです。
それでもそこまでする選手は全体の1割を超えないのです。
一応のレベルに達して満足する選手は駄目ですね。どのようなランクになっても、
自分をレベルアップさせるためには謙虚な気持ちが必要です。
コーチを含めて他の意見をどのように消化するかは本人の問題です。
全てを吸収しようなんて出来るわけがないのです。取捨選択は自分の中で行えば
良いのです。アドバイスは、時に自分の知識を披露する方がいらっしゃるでしょうが、
忘れてならないのは、殆どの方があなたの成長を望んでいるからだと言うことです。
その注意を無碍に撥ね付けるのではなく、自分のレベルアップに適しているかどうかを
先ず確かめなくてはいけません。折角のアドバイスを試さないうちに捨て去るなどは
大変な損失です。日本はスポーツ界全般に有名選手=優秀なコーチという風習が
抜け切れていないようですが、
これらは選手自身が、自覚を持って対処すれば自ずと解消するものだと思います。
コーチについての著書を読んでいましたら、その中で勝利至上主義とは、
「勝つこと以外に価値がないという考え方」あるいは
「勝つためには手段を選ばないやり方」と一般的に定義されているとありました。
また、これの最大の問題点は、スポーツを行う者の主体性を無視して指導が行われる
点にあるとも追記されていました。
そこで私は辞書を引いて見ました。勝利至上主義とは何か?
勝利 → 勝負に勝つこと。戦いに勝つこと。
至上 → この上もないこと。最高。
主義 → 正しいと信じている考え方や方針。
これを纏めると、「勝負に勝つことを、この上もないものと信じている考え方」であり、
そこには著者が明言するようなネガティブな内容ではなく、極めてポジティブな感じを
受けるのです。勝利を目的とする結果として、それを得ることが勝利至上主義と
言えないなら、それは決して素直な意見ではないと思われます。謙虚な見方を是とする、
日本人特有の考え方からでは、スポーツマンシップに悖ると考えるのでしょうか、
敢えて極論するなら、その考え方が国際的な競技において活躍出来ない
原因ではないかと憶測してしまいます。
言葉の使い方は難しいもので、著者の意図は私が指摘するものと違うかもしれませんが、
言葉に踊らされても意味のないことだと思います。
人それぞれが、勝手に解釈しがちな言葉の意味や重さは、
その人がその場で適切に使ってこそ価値のあるものではないでしょうか?
人間が苦手であることの一つに「自分を客観視出来ない」ことがあります。
一番手頃な方法は窓や鏡を利用することでしょうが、対象のボールが不在です。
ある意味で静止状態であり、本当の欠点を見出すことは出来ません。
次いでビデオでしょうか?ただ、これも使い方を間違えれば意味がありません。
先日も次のようなことがありました。
選手からフォームをビデオに撮ったので見て欲しい。それで見る前に一つ質問しました。
そのビデオは試合中のものかそうでないか?答えは玉出しによるフォーム撮影でした。
私の答えは見ても意味がないでした。
何故なら、玉出しであれば考えられる最高のフォームで打っているはずです。
それをチェックしても修正の解決にはならないのです。
どうしてもと言うので拝見しましたが、結果は思っていた通りでした。
これを試合に出せたら、今の成績は過去の物になるよと告げたのです。
フォームの修正等で、コーチに速効性を期待することがあります。
勿論その気持ちは分かりますが、それほど簡単なことではありません。
よく初心者より経験者の方が教えにくいと言われますが、
一旦ついた癖は簡単には修正できないのです。それこそ、
つきっきりでくどいほど云わないと、直すことは難しいものです。
忘れてならないのは、基本的に「コーチは選手に形を与えるのではなく、
形を一緒に見つけてあげること」が最も大切なことです。ですから
まず、自分のフォームにもっと自信を持つことです。
競技をするのは間違いなく選手なのです。コーチは手伝いにしか過ぎないのです。
それをよく認識して、コーチを活用することが大切なのです。
ただ、自信を持ってアグレッシブに行動するのは結構ですが、
だからと言って、コーチを無視して独断でフォームを変えることはいけません。
選手のフォームは絶えず変化します。しかし、本人はその変化に気づかないものです。
その変化に対して素早く察知し、適切に処置をするためにコーチがいるのです。
ですから勝手にフォームを変更しては、
コーチはそのフォームの定着に責任が持てなくなります。
また、選手に対しての信頼関係を失うことになり兼ねないことです。
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